60年代70年代の日本の名曲を、平成のクリエイターたちが新たな視点で制作したMV(ミュージックビデオ)
どんな曲がとりあげられるのか、ワクワクしながら見ました。
MVがない時代の曲を、どう表現するか。クリエイターの創作風景によって、期待倍増。
ネコのいる仕事部屋とか、ちょっとのぞいてみたくなりません?
くれないホテル
(1969年)西田佐知子(2019年)ひらのりょう
作詞が橋本淳で、作曲が筒美京平。筒美京平作品では『サザエさん』が有名ですね。
レトロモダン好きのひらのりょう。観光地の絵はがきメインの資料本は『昭和30年代モダン観光旅行』
ネコのいる仕事部屋、なんとも居心地がよさそう。まるくなってるねこまで絵のようです。
こわい話のラジオきいてると、緊張で作業がはかどるそうな。
ケンタウロス(半人半獣)がかけていると、ケーブルカーが女の子をのせ宇宙へ。着いたところは、くれないホテル。
昭和なもようの壁紙。彼女の涙がこぼれた先は……。
けだるい歌声にデフォルメされたキャラ。シュールな展開にやわらかな色味。
ネオンサインに、ホテルのルームキー。懐かしく、どこかあたたかいものたち。
恋のフーガ
(1967年)ザ・ピーナッツ(2019年)田中秀伸
作詞がなかにし礼で、作曲がすぎやまこういち。ドラクエも好きだけど、すぎやまこういちの歌謡曲も知りたくなりました。
メイキング部分が、すでにテレビ東京のドラマ風。喫茶店の扉あけて、山田孝之はいってきそう。
カップルじゃなくアベックといいたくなる恋人たち。平成ボディで演じる昭和レトロ。
女の子の髪どめ。サイケなサングラス。男性の長いながい黒髪。
濃厚な緑、路地の風景、ひろいあげたネコ。彼らを見ていたのは、誰だったのか?
音楽のカッコよさがきわだつ超短編映画の趣。何回でも見たくなります。
ロックン・ロール・マーチ
(1975年)大瀧詠一(2019年)大西景太
モノクロのオブジェたちが音にシンクロして動きだすと、にぎやかな行進に。
世界で一番好きな歌声が大瀧詠一。どんなに元気がない時も、彼の歌ならとどきます。
マイ・ラグジュアリー・ナイト
(1977年)来生たかお(2019年)水尻自子
しばたはつみも歌っていましたね。昔の女性歌手の大人っぽさといったら!ただものでない気配に圧倒されたものです。
とろみのあるアニメーション。するりとぬける靴下。白鳥の首のラインをすべるプリン。電話線のらせん。
水のなか、貝の舌、はさみ。ゆるゆるとつながっていくイメージ。来生たかおの声が、淡くかすんだ色にとけていくようでした。
天までとどけ
(1979年)さだまさし(2019年)村田朋泰
『家族デッキ』(2007年)
東京の下町にある理容店を舞台にした短編アニメーション作品。
このMVは家族デッキの続編。若い二人が老夫婦になるまでの物語を、ことばでなく環境や空間で伝えています。
花柄のパンタロン、石の標本、喫茶店の看板。お茶のきれいなヒスイ色まで、なにげない日常がえがかれる人形アニメーション。
作品への愛情が無機物の作りこみにうかがえて、古びたタイルの1枚すら雄弁に語りかけてきます。ブラウスのさくらんぼ柄など昭和あるあるも。
ミッチー音頭
(1963年)青山ミチ (2019年)関和亮
恋は地球ができてから~の説得力。『創聖のアクエリオン』の一万と二千年前超えてる歌があったとは。
赤の服、青の服、黄の服を着たダンサーがイェイイェイ。スタミナつけるのも納得のパワフルな仕上がり。
まとめ
全部おもしろいのですが、特に『恋のフーガ』田中秀伸の世界は、こんな風に見えるんですね。
『天までとどけ』も、村田朋泰作品をすべて見たくなりました。
それにしてもメイキングまで、こんなにおもしろいなんて。ベランダから外見てるシーンすら、普通なのに普通じゃない。
つみあげられた本の風情すら違ってみえるネコ効果?
クリエイターってスゴイ!