NHKネーミングバラエティ「日本人のおなまえっ!」必殺技のおなまえ
あなたの好きな必殺技はなんですか?
一説では、日本には10万種類以上の必殺技があるそうです。
でも、外国のヒーローに必殺技には名前がありません。いったいなぜ?
1位 かめはめ波(ドラゴンボール 孫悟空)
2位 アンパンチ(アンパンマン)
3位 元気玉(ドラゴンボール 孫悟空)
4位 スペシウム光線(ウルトラマン)
5位 ライダーキック(仮面ライダー)
6位 空手チョップ(力道山)
7位 昇竜拳(ストリートファイター)
8位 卍固め(アントニオ猪木)
9位 北斗百裂拳(北斗の拳 ケンシロウ)
10位 螺旋丸(NARUTO)
Contents
かめはめ波の名づけ親は作者じゃない?
「ドラゴンボール」からは、かめはめ波と元気玉2つもランキングいり。さすが国民的アニメ。
鳥山明が、亀仙人のカメの名がつく必殺技を考えていた時、奥さまが「かめはめ波はどう?」といって決まったそうです。
奥様はみかみなち。「上を下へのロックンロール」というQUEENのマンガを描かれていました。
ただハワイの初代大王(カメハメハ大王)と同じなまえで、ハワイの人に怒られないかと心配したそうです。
でも、主人公が使う正義の技だから、だいじょうぶだろうと採用されたとのこと。
かめはめ波じゃないかめはめ波なんて、想像もできませんね。
いまでは世界中で人気のかめはめ波。ハワイの人もよろこんでくれていることでしょう。
最初は名なしのスペシウム光線
はじめはウルトラマンの技に、名前はありませんでした。技がキマっても、隊員もただ喜ぶだけ。
製作が間に合わず、子どもたちを前に公開収録したこともあったとか。実際にウルトラマンたちを見られたら、末代までの語り草というか自慢になりますね。いいなあ。
多忙をきわめるなか、必殺技の名おなまえを考えることになった飯島監督。なかなか思いつきません。
そこで思いだしたのが、ウルトラマンのコンセプト。子どもたちに夢と希望をもってもらうことが目標です。
当時は米・ソの宇宙開発競争の時代。科学に希望をいだいていました。
「宇宙」と「科学」を連想する名前にしよう!
ウルトラマンは宇宙からきた…スペース 化学物質にはアルミニウムやマグネシウムなど…ウムが多いなとふたつを合わせてみると。
そこから、スペシウム光線が生まれました。
その後、日本を代表するヒーローとなったウルトラマン。ウルトラマンといったら、スペシウム光線ですよね!
必殺技「ビーム」はなぜ「ビ~ム!」とのばす?
スペシウム光線をきっかけに、その後多くのアニメの必殺技に、とり入れられていった「ビーム」
「光子力ビ~ム」「ゲッタービ~ム」と伸ばすのはなぜか?
よいこの濱口優がキン肉マンを演じている声優の神谷明から、必殺技の言い方を教わったそうです。
神谷さんが、いちばん最初にアニメを担当されたとき、ビームを出す宇宙船にのっている宇宙飛行士の役でした。
神谷さんが、最初キレのある『ビーム』といったら、監督さんが「それじゃ敵にとどかないから、敵にとどいてるイメージを出すために『ビーーーム』と伸ばしてばしてくれ」と。
そこからはみんな声優さんは、「ビーーーム」と伸ばすようになりました。距離感をだすための工夫だったんですね。
空手チョップ=あこがれ+コンプレックス
昭和29年(1954年)テレビでプロレス中継がはじまる数日前。練習にはげんでた力道山のもとに、中継担当のアナウンサーがやってきました。
当時プロレスは、未知のスポーツ。ひとつずつ技を、ていねいに教える力道山。アナウンサーにも、身をもって体験してもらいました。
「力道山さんの1番の得意技は何ですか?」
「これだよ!」とやってみせる力道山。
「この技はなんというのですか?」とアナウンサー。
当時は、技に名前をつける習慣がありません。力道山は、どうすれば観客がよろこんでくれるかと考えました。
そこでひらめいたのが「空手チョップ」
英語のチョップと日本の武術の空手を組みあわせて、ひびきもいい。
昭和30年(1955年)の街頭テレビで力道山の試合を見る人々の写真。クラクラするほど人・人・人。視聴率64%の威力は、すさまじいものでした。
日本人のコンプレックスと、アメリカへのあこがれが反映された空手チョップ。力道山ネーミングセンスまで、ただものじゃなかったんですね。
必殺技にも戦略あり
週刊少年ジャンプの主な必殺技
1972年(昭和47年)「アストロ球団」スカイラブ投法、ジャコビニ流星打法
1977年(昭和52年)「リングにかけろ」ブーメランフック ギャラクティカマグナム
1981年(昭和56年)「キャプテン翼」ドライブシュート スカイラブハリケーン
1983年(昭和58年)「北斗の拳」北斗百裂拳 北斗百裂脚
1984年(昭和59年)「ドラゴンボール」かめはめ波 元気玉
1987年(昭和62年)「ジョジョの奇妙な冒険」波紋疾走(オーバードライブ)幽波紋(スタンド)
「アストロ球団」がなつかしすぎて、思わずメモメモ。アキレス腱切っても走ってましたね。
「リングにかけろ」も最初は地味。主人公の必殺技ブーメランフックから人気に。ライバルキャラも必殺技で、さらに大人気になりました。
ところが、80年代後半になると必殺技路線に変化がおこります。
かっこいいことは、かっこわるい。
そんな流れから、かめはめ波や元気玉、庶民シュートなど、ゆるい必殺技が誕生。
「リングにかけろ」以降「週刊少年ジャンプ」の編集方針 【友情・努力・勝利】が 【友情・必殺技・勝利】へと変化したともいえるでしょう。
ナルトも修行してるけど、決めては努力じゃないんですね。なるほど~。
なぜ技の名前を極意やマニュアルにしたの?
古武術の道場で戦国時代から、受けつがれてきた必殺技。響きがかっこいいだけではなく、技のやり方まであらわしています。
◆金翅鳥王剣
小野派一刀流 免許皆伝 石崎徹さん
金翅鳥王剣という技の名前の中に、やり方がこめられています。
金翅鳥とは、インドの神話にでてくる神の鳥ガルーダのこと。空から獲物をねらうように刀を振りあげ、くちばしでついばむごとく身をまもり、丸のみするように一刀両断。
ガルーダの動きをイメージするという技の極意が、そのまま技の名前になっています。
◆虎振
二天一流 宗家 加治屋孝則さん
虎の尻尾のように刀をうしろにかまえ、相手にすきを見せません。敏捷な身のこなしで自分自身が虎になったつもりで、相手に攻撃します。
◆束八寸有利之事
技の名前が詳細なマニュアルになっているケース。
鹿島新當流 宗家 吉川常隆さん
柄で胸をめがけてカウンター。束が8寸(24㎝)で胸を正確につけるということ。
古武術が生まれたのは戦国時代。いつ師匠が亡くなってもおかしくない時代は、技を後世に伝承するため、必殺技の名前自体をマニュアルにしました。
必殺技のルーツは万葉集
外国では必殺技がないのに、なぜ日本では10万種類ともいわれるほど必殺技があるのでしょうか。
こたえは意外なところにありました。新元号令和の出典である「万葉集」です。
神代より大和の国は 言霊の幸はふ国と語り継ぎ
大和の国(日本)は言霊が花開いてる そういう国だ との意。
言霊には、魂がやどり名前をつけると力がえられると考えられていました。
言霊信仰によれば、必殺技名を考えるのも叫ぶのも、力をえるための祈り。
日本ではどんな強い敵でも、自分の力で倒すことができる精神性を大事にしています。
言霊信仰によって、ヒーローの必殺技が生まれ、必殺技大国になりました。
「ライダーキック!」と口にするだけで、燃えるのも理由があったんですね。